父の予言

写真は、実家から車で20分くらいの五箇山合掌作り。

世界遺産にもなっており、
アメリカのCNNで
日本の最も美しい場所31選の1つとして
選ばれた場所でもある。

今日は父の不思議な予言について
書こうと思う。

今年のお正月に姉と会った時、
父の最期について詳しく話してくれた。

父は、2010年の夏に肺癌で亡くなった。

私は父の死に目に会えなかったのだが、
亡くなる直前、父は肺癌と糖尿病の治療のため
入院していた。

夏のある日、父が母に
「家の素麺が食べたい。」
と言ってきた。

入院しているので、
普段は病院食だったが、

母はその言葉を聞いて、
次の日に家で茹でた素麺を
差し入れてあげた。

父は母の作る素麺が好きだったらしい。

父は素麺を美味しそうに食べ、母に
「いままで諍いばっかりだったけど、ありがとう。」
と急に言ってきたそうだ。

母は驚いた。

私が小さい頃、
父と母は喧嘩ばかりしていた。

父は大声で母を怒鳴りつけ、食器を投げつけたり、
母が身の危険を感じて
家から飛び出して数時間いなくなることもあった。

そんな時、
家で飼っていたワンコ
(名前が「ワンコ」のミックス犬)
が外で震えて縮こまっているのを見て、

小学生の私は外で一緒に寄り添っていた記憶がある。
「大丈夫、大丈夫。」
と声をかけてあげながら。
自分自身にも言い聞かせていたのかもしれない。

両親が歳を取ってからは、
そんな激しい喧嘩をすることもなく、
私から見ると
立場が逆転していた。

父は随分穏やかになっていて、
母の方が父より強くなっていた。
そしてその様子が仲良しに見えて
微笑ましくもあった。

とはいえ、父はシャイで、
母に「ありがとう」なんて
言ったことはなかったのだと思う。

私も父がそんな言葉を
母に言ったと聞いて、
「すごい!」と驚いた。

話を戻そう。

母はそんな父の言葉に驚きつつも、
いつもと同じように父に接した。

その日、父は看護師さんや母や姉に
「今日オレは死ぬんや。」
と何度も言っていた。

父はシャイな割によく冗談を言って、
看護師さん達を笑わせていたらしい。

「何言ってるのー(笑)」

と周りは冗談だと思い、気にしなかった。
病気で少し悲観的になって、
だけどわざと冗談で
言っていると思ったらしい。

夕方になって
母と姉が家に帰ろうとした時、

「今日はずっと居てほしい。」

と今度は言ってきた。

今までそんなことを
言ってきたことはなかった。

母と姉は不思議に思いながらも、
個室ではないし、付添人が休める場所もない。
父の調子もそこまで悪そうではなく、
また、明日も来るのだからと思い、

「帰るよ。」
と言ったら、
「じゃあ、これが今世での別れやな。」
と父は言った。

そんなやり取りをかわし
母と姉が家に帰ってから、

その日の夜に父は
静かに息を引き取った。

母と姉は後悔し、そして驚いた。

あの時、帰らずそばに居てあげたら良かったと。
そして不思議な、
本当に立派な死に方だったねと。

私は、すごいと思った。

自分の死を冷静に、
しかも自分が今日死ぬということを悟って、
その通りに逝ってしまった父に
尊敬の念を抱いた。

と、同時に
いつもと違う様子の父を気にしつつ、
まさか…と疑うことがなかった
母と姉の様子に、

何気ない現実の中に
隠された真実や奇跡があるのかもしれないと思えた。

父の生まれを見てみた。
本命星:五黄土星 壬申
月命星:九紫火星 癸丑
日命星:三碧木星 乙亥
坎宮傾斜
同会:一白水星

結構オレ様だ。頑固。
側からは不機嫌に見えることが多いが
実はとても優しい。

怒りっぽいところも
星に出ている。

傾斜と同会が同じなので
自分の意思通りに動いたら
運が開ける人でもある。

苦労持ちなところもあるが、
その苦労を乗り越えて
運を切り開いていく力を持っている。

自身から聞いたことはないけれど、
父は小さい頃から
苦労が多かったと母から聞いている。

繊細で感受性豊か。
思いやりがあって穏やか。
自己表現が苦手なところもある。

父はよく一人でクラシックを聞いたり、
写経をしていたけど、
そういうところは感受性豊かで
穏やかな部分が出ていたのかもしれない。

家庭生活に難が出やすいのも
命式に出ている。

離婚を考えたことが
あったのではないか。

病気をしやすい体。
長年糖尿病と戦っていたので、
大変だったと思う。

日干支が乙亥(きのとい)で異常干支と言われる。

異常干支の人は
人と違った感性を持っていたり、
直感が鋭かったりする。

自分の死が分かってしまったのは、
異常干支の影響もあるのかもしれない。

こんな風に命式を見ていると、
「父」ではなく、
同じ一人の人間としての
「生」が見えてくる。

今更だけど、
今はもういない父に
父の人生について聞きたかった。
と思う。

そして今更だけど、
「本当にありがとうね。」
と感謝を伝えたい。
と思う。

<追記>
この記事を書いた後、姉から聞いた。
父のお葬式で、父の弟である叔父さんが

親父の仕事がうまくいかなくなり、
金欠になった時、私の大学を続けさせるために
代わりに(父が)大学を辞めてくれた…。

と、涙していたそうだ。

父が大学を中退したことは聞いていた。
だけど、理由については一度も聞いたことがなかった。
他の親戚の人も知らなかったらしい。

叔父さんは大学を卒業し、
学校の体育の先生になっていた。

本当に頭が下がるなと思った。
そして占い通り、
とても優しくて思いやりのある人だったのだと
証明できたように感じた。

「お父さん、本当にありがとうね。」